-CFCLにミューズはいない-デザイナー高橋悠介が作る未来とは

出典:CFCL

ニットにフォーカスした、ソリッドかつ繊細でエレガントなデザイン。
家でのゆったり時間から子供との遊び、ビジネスやフォーマルにも対応できる汎用性。
どんな体型にも柔らかくフィットし、しわがつきにくく洗濯機でも洗える高い機能性。
日常にフィットするモード感と手が届きやすい価格帯。
環境や人に配慮した組織づくり・ものづくり。

これらすべての特徴を備え、国内外から高い評価を受けているブランドが、高橋悠介氏が2020年に立ち上げ、力強く率いている『CFCL〈シーエフシーエル〉』です。
確固たる信念をもって創り出されたその衣服は、現代をポジティブに生きる人々の個々の魅力を引き立て、気持ちを豊かにしてくれます。
多角的な視点で現代生活にフィットする衣服を追求し、先進的かつ実験的な姿勢で未来へとアップデートし続ける『CFCL』。
その動向からは一時も目を離すことができません。
コアとなるキーワードを探りながらブランドのフィロソフィーを紐解き、そのすべてに迫ります。

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Contents___________________________

  1. CFCLの出発点
    1. CFCL誕生の背景
    2. ネーミングの由来〈Clothing For Contemporary Life〉【現代生活のための衣服】
    3. 中核をなす素材と技術〈3Dコンピューター・ニッティング〉
    4. コンセプト
      1. ソフィスティケーション〈Sophistication〉【洗練】
      2. コンフォート&イージーケア〈Comfort and Easy-care〉【機能性】
      3. コンシャスネス〈Consciousness〉【社会的意識】
    5. テーマ〈knit-ware〉【生活に則した器】
  2. 高橋悠介〈クリエイティブ・ディレクター/CEO〉の歩み
  3. CFCL〈会社・ブランド〉の歩み
  4. CFCLの現在と未来
    1. 進化するコンテンポラリーデザイン
      1. 時代のエレガンスを体現〈POTTERY・FLUTEDシリーズ〉
      2. 無駄を削ぎ落としたダイバーシティ
      3. 多様な日常に馴染むモード感
    2. 世界的なコレクション展開
      1. パリ・ファッションウィーク〈パリ・コレクション〉参加
      2. リアル&オンラインショップ
    3. B Corp認証企業としての責任と透明性の追求
      1. LCA〈ライフサイクルアセスメント〉の実施
      2. クリーンな素材調達とアップサイクル
      3. SDGs全体に対するパートナーシップ
  5. まとめ~CFCL最新情報とあわせて~

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1.CFCLの出発点

出典:fashionsnap.com

『CFCL』は、『ISSEY MIYAKE MEN〈イッセイ ミヤケ メン〉』のデザイン・ディレクターを務めていた高橋悠介氏が、2020年に独立して立ち上げたブランドです。
創設者の経歴やエレガントなデザインとともに、ニットだけで構成されたコレクションやサステナブルな取り組みも大きな話題を呼んでいます。
そんなCFCLは、どのような想いから誕生した、どんな考え方や特徴を持ったブランドなのか。
まずはそこから始めましょう。

1-1.CFCL誕生の背景

出典:CFCL

高橋悠介氏が約10年勤めた三宅デザイン事務所という偉大な組織の要職を退き、独立して自らの会社とブランドを立ち上げた背景には、さまざまな要因があります。
まずは、ファッション業界が抱える環境・労働などの諸問題が、無視できない状況になってきていたことが大きなファクターでした。
仕事をしながらそれらの問題を肌で感じているのに、組織の中にいる自分では、問題の全体には到底リーチできないというもどかしさが、徐々に募っていったといいます。

また、家族をひとり失ったこと、逆に新しい家庭を持って新たな命を授かったことも大きなきっかけです。
母親が亡くなったことで、「本当にやりたいことをやらなければ」という気持ちが強まり、子供が生まれたことで「次の世代のために責任ある行動をとりたい」と考えるようになります。
同時期に行われたグレタ・トゥーンベリさんの国連気候変動会議でのスピーチにも触発され、今の時代は小さな発信元であっても芯の通った強い信念があれば、大きな影響力を持てるとも認識。
イッセイミヤケで教わった大切な精神も「社会のために服をつくること」「服づくりで社会をよくすること」でした。

「関わる全員が笑顔になってこそ、着る人も笑顔になる」と、独立してサプライチェーンも含めたシステムの基本から自身で「すべてをデザインする」ことを決意。
ファッションをやるからにはいつかは自分のブランドを持ちたいと考えていた高橋氏にとって、「その時が来た」ということでもあったでしょう。

1-2.ネーミングの由来〈Clothing For Contemporary Life〉【現代生活のための衣服】

出典:CFCL

『CFCL』というブランド名は、『Clothing For Contemporary Life』の頭文字をとって名付けられたもので、『現代生活のための衣服』という意味を持っています。
「MoMA」=Museum of Modern Artのように、何をするためのどんなブランドなのかが明確に分かるようなブランド名にしたいと、スローガン自体をブランド名としたそうです。
「YUSUKE TAKAHASHI」のように、自身の名前をブランド名にしなかったのは、自分の美意識を表現するためではない、「社会のための服」をつくりたかったから。
ブランドは創設者やデザイナーだけのものではなく、関わるすべての人によってつくられるものなのだから、という思いもあったといいます。

デザイナーのものでも、ショーのものでもなく、服が何かを押しつけてくるのでもない、現代を生きるひとりひとりのためのジェネラルなブランド。
そこには世代やジェンダー、国境などの垣根はありません。
目指しているのは、多様な人々それぞれの生活にフィットし、自分らしさをサポートする、日常生活の道具に近い感覚の洋服です。

CFCLはスタイルブランドではなくプロダクトブランドだと、高橋氏は明言しています。
多くの人に長く愛してもらえるように、柄はほとんど用いずミニマルに。
不要な装飾は省き、意匠は背筋がすっと伸びるような背面中央の細いリブだけに。
ロゴの鎧は着けずに、着る人の内面を引き立てる薄皮のように。
現代は洋服が過剰生産され、本当に必要とされる服しか選ばれない時代でもあります。
そんな中にあって、「本当に社会に求められている衣服」を追求し続けるのがCFCLなのです。

1-3.中核をなす素材と技術〈3Dコンピューター・ニッティング〉

出典:CFCL

CFCLの衣服は、基本的に「すべてニット」で構成されています。
そしてそれらのニット・プロダクトの多くは、高橋氏が学生時代に出会った「3Dコンピューター・ニッティング」という最先端技術によって生み出されているものです。
高橋氏はニットそのものと、コンピューター・ニット技術の双方に大きな可能性を感じ、自分のブランドを持つときのために温めていたといいます。

まずニットの良いところは、ジェンダーも世代も体型も越えてあらゆる人の身体にフィットするという特筆すべきダイバーシティの要素を持っているところです。
古くから今でもどこかほっこりとした印象でカジュアル感があるニットですが、それを洗練されたモードに変換している例がほとんどなかったことにも着目。
トライすれば圧倒的なオリジナリティを持つに違いないと確信します。

また、3Dプリンターに似たテクノロジーでつくられるコンピューター・ニットは、継ぎ目や縫い目がない=シームレスな仕上がりで、ごわつきがなく伸縮性にも優れ、着心地が良いことが特徴です。
端正な立体感が出せる上、ニットの構造に建築的な要素があることも魅力的に映りました。
糸の種類や編み方、加工の仕方などを工夫することで、無限に異なる表情や生地感の創出が可能です。
さらに、プログラミングしておけばその通りに編み上がるコンピューター・ニッティングには、裁断などの工程がほぼ不要で、ゴミの出方を極端に少なくできるという大きなメリットがあります。

ニット素材と最先端のものづくり技術は、CFCLの核となり、「ニット×モード×サステナブル」というほぼ未開拓の領域に挑める下地をすべて備えていたのです。

1-4.コンセプト

出典:CFCL

「Clothing For Contemporary Life」を掲げるCFCLのコンセプトは、3つの要素でできています。
それが、「ソフィスティケーション」「コンフォート&イージーケア」「コンシャスネス」です。
日常のあらゆる場面に適応するプロダクト、着心地の良さや手入れのしやすさ、そして責任を全うする透明な生産背景を追求しています。

1-4-1.ソフィスティケーション〈Sophistication〉【洗練】

出典:CFCL

CFCLが目指しているのは、現代生活のあらゆるシーンにフィットする洋服です。
子供と公園で遊んでから出社し、そのままドレスコードのあるレストランへ向かう。
家でのゆったり時間のあと、ショッピングや美術館巡りを楽しむ。
そんな一日を一着で完結するには、小物やアクセサリーで雰囲気を自由に変えられる、「洗練された」洋服であることが大切です。

オンとオフが曖昧になっている日常に寄り添ってくれるのは、リラックス感と上品なエレガンスが同居しているシンプル&クリーンなデザイン。
カジュアルな印象が強いニットだからこそ、より「洗練」に気を配る必要があります。
しなやかなソリッド感が出る高品質なメイド・イン・ジャパンにこだわり、日常に不必要な要素は削ぎ落とす。
そうして実用的かつシャープな味付けのディテールで、ミニマルに仕上げています。

1-4-2.コンフォート&イージーケア〈Comfort and Easy-care〉【機能性】

出典:CFCL

現代生活のための洋服は、多様な人々の身体に気持ちよく寄り添い、日常的に清潔な美しさを保てるものであるべきだとCFCLは考えています。
まずはシームレスなニットという特性を活かし、子供から大人まで、ジェンダー・国籍などを問わず、妊娠中の身体にも柔軟にフィットする着心地の良さを実現。
伸縮性と立体的なデザインが、スタイルアップも叶えてくれます。

ソリッドな印象なのに軽く、着替えもスムーズでしわができにくいのも、日々の着用に嬉しいファンクションです。
そして、構築的なモードデザインでお手入れが難しそうなのに、自宅で洗濯可能かつ乾きが速いという驚きの機能性も備わっています。
飲食でシミができても、子供が外で遊んで汚れたりしても、ほとんどの製品は洗濯機で簡単にケアが可能。
CFCLは本当に着る人のことを想った服づくりをしていると、実感できるポイントです。

1-4-3.コンシャスネス〈Consciousness〉【社会的意識】

出典:CFCL

石油産業に次ぐ第二位の環境汚染産業といわれ、人権・労働問題なども深刻になっているファッション業界。
「次世代への責任を全うする社会のための服作りをしたい」との考えが創設の根底にあるCFCLは、サステナビリティーへの取り組みを徹底しています。

まず、社会問題のすべてに対応できるシステムを、トータルでゼロからしっかり組み上げるために「CSO〈Chief Strategy & Sustainability Officer(チーフ・ストラテジー&サステナビリティ・オフィサー)〉」を設置。
環境や人に配慮した公益性の高さを網羅的に評価する、国際的な認証=「B Corp(Bコーポレーション・Bコープ)」認証に創業時から取り組みました。
「B Corp」取得の過程では、SDGsに代表される目標に基づき「地球環境・従業員・顧客・コミュニティ・ガバナンス」という5つの切り口で企業活動全体のパフォーマンスが審査されます。
約300にのぼる多角的な質問の多くは記述式で、数値を示しながら証明・改善のラリーを何度も繰り返す必要があるなど、取得は至難の業です。
それに対し、CFCLは真摯な対応を1年以上続け、認証取得の条件である80/200点を大きく上回る128点を獲得。
日本で7社目、日本のアパレル企業では初となるB Corp認証を取得しました。

でも、「自らサステナビリティーを全面に打ち出すことはしたくない」と高橋代表は強調します。
やりたいことは、ニットでのおもしろく素敵な「クリエイション」であって、サステナビリティーはあくまでもベース。
ショップで見て素敵だと思って購入した洋服の、その背景にも共感できる取り組みがあったことを知るかたちでCFCLをより好きになってくれるといい、と話します。
エコだと思ってやったことが他の視点から見ると実は汚染に繋がっていたりと、見せかけだけの環境配慮を指す「グリーンウォッシュ」という言葉も出てきている昨今。
自ら「サステナブルな企業です」というのではなく、客観的な第三者の指標で責任と透明性を示したいと考えています。

また、高橋代表はB Corpは近い将来、どの企業も当たり前に取得する世界的なスタンダードになるとも話します。
そんな中でオリジナルな価値を高めるのもやはり「クリエイション」の部分です。
CFCLのコアであるコンピューター・ニッティングは、プログラムどおりに編み上げるため、カットロスが出にくい服作りが叶う技術。
しかもプログラムさえ入れればあとは全自動なので、市場がどこにあっても機械を持っていくだけで消費地に貢献しながら生産でき、輸送コストも減らせます。

自社の強みを活かした公益性の高い服作りが、プロダクトをよりソフィスティケイトする。
その洗練されたシンプルな美しさや日々の着心地の良さがロングライフな着用につながって、またエコに戻ってくる。
そんなものづくりの幸せな循環が、CFCLでは叶っていると感じます。
心躍るデザインや着心地が、地球や人にとっての良いことにもつながっているというのは、本当に嬉しいことですね。
CFCLの責任と透明性に関わる詳細な取り組み内容は、また後の章でもご紹介します。

1-5.テーマ〈knit-ware〉【生活に則した器】

出典:CFCL

CFCLのファーストコレクションから最新のVol.6コレクションに至るまで、その根底に一貫して流れているテーマが、「knit-ware」です。
テクノロジーの進化によって、人にとっての「人間性」がより重要視されゆく時代。
そんな現代にCFCLが提示するのが、人々が生活を送る上での「器=ware」のような衣服です。
個々の日常に必要な機能を果たすための形状や装飾を備えて人々の生活に寄り添い、社会に対してさりげなく「自分とは何者か」を提示する接点になる。

時代に応じてその姿を変化させながら文化を培ってきた器のように、シーズンごとに視点を変えながら、生活に則した器としてのニットウェアを提案しています。

2.高橋悠介〈クリエイティブ・ディレクター/CEO〉の歩み

出典:pen-online

CFCLのプロダクト自体のデザインはもちろん、サプライチェーンまで含めた組織づくり、ブランドのコンセプトやコレクションのテーマなど、「すべてをデザイン」しているのがCEOの高橋悠介氏です。
CFCLのフィロソフィーを理解するには、創設者でありクリエイティブ・ディレクターである高橋悠介氏について知ることが欠かせません。
どんなことを考えながらどのような生を歩み、CFCLを立ち上げるに至ったのか。
そのバックグラウンドに迫ります。

【高橋悠介氏がCFCLを立ち上げるまで】

高橋悠介氏は1985年生まれ、東京都出身です。
弁護士であり医師でもある理論的な父と、社会派ライター・ファッションジャーナリストである活動的な母との間に生まれました。
両親が家にゲストを招いて人権問題や環境問題などについて活発に議論しているのが日常で、母親の仕事に同行して国内外を回ることも度々あったという少年時代。
そんな生育環境が、現在のCFCLの社会的意識に繋がっているのは間違いありません。

また、共働きの両親に代わってよく面倒を見てくれていたのが建築家の祖父です。
祖父の影響も大きく、高橋氏は小さな頃から建築家になりたいという夢を持つようになります。
同時に図工や工作が得意だという自覚も持ち始めた悠介少年。
その才能や想いにいち早く気付いた父は、“医者の子は医者“といった世間体にとらわれることなく、本人の意志を尊重し続けてくれたといいます。

ファッションに目覚めたのは中学3年生頃です。
おしゃれな友人と出会い、当時全盛だった「裏原系」に興味を持つように。
雑誌を読み、裏原宿のショップを何軒も巡り、母からもモードについて聞いていくにつれ、他の人たちよりもファッションへの好奇心が強いと認識していきます。
のちに深く関わることになる三宅一生氏の存在について母から聞いたのもこの時期です。
「『イッセイ ミヤケ』も知らずにファッションを語るな」と怒られたそう。
自身でデニムにやすりがけや染めなどの手を加えるようにもなり、建築家の夢も持ちながら、メンズスタイリストや靴職人などの仕事にも関心を持つようになっていきます。

高校で進路を考える頃にはインテリアやプロダクトなどにも興味は広がり、芸術全般を学べる大学を選択。
絵画や彫刻、デザインなどを幅広く学び、特に現代アートとテキスタイルデザインに惹かれるようになっていきます。
すべてに通じるのではないかという理由もあり、選んだ専攻はテキスタイルデザイン。
その後、同専攻があるロンドンのゴールドスミス・カレッジへ1年間の留学も果たしました。

ロンドンでは型にとらわれないパンク色の強い校風に大いに刺激を受けながら、日本の個人としてのアイデンティティにも向き合い、意欲的に勉学に励みます。
ただ、カレッジで優先されたのは縫製のクオリティや作品の完成度ではなく、アート性やコンセプトでした。
現実的にものをつくる技術面をもっと学びたいと思うようになった高橋青年は、日本に戻った後、大学と平行して文化服装学院のオープンカレッジへの通学を開始。
卒業後は同系列の専門職大学院である文化ファッション大学院大学(BFGU)に進学します。

そして、BFGU時代に出会ったのが、CFCLのアイデンティティとなる「3Dコンピューター・ニッティング」による制作方法です。
他の院生よりも技術面で劣ると感じていた高橋氏は、授業で知った「島精機製作所のホールガーメント機によるコンピューター・ニット技術」に大きな可能性を感じます。
事前にデザインのプログラミングを組んでおき、専用機に糸とともにセットすると、プログラムどおりの1着がほぼ完成形の状態で編み上がってくるテクノロジー。
ホールガーメント=無縫製という名のとおり、パーツごとに縫い合わせる必要もなく、シームレス=継ぎ目のない、なめらかで完成度の高いニット制作が叶うのです。

出典:tokujin.com

この頃には、プロダクトやインテリア・建築とも関わりが深く、デザイン施設を持ち、世界と戦うための技術を磨ける「イッセイ ミヤケ」で働きたいとの想いを強くしていた高橋氏。
東京2020の聖火トーチの制作などでも知られる吉岡徳仁氏の、「ハニーポップ」というハニカム構造の椅子に感銘を受け、その経歴に三宅デザイン事務所の名前を見つけたこともきっかけになったといいます。
建築家はよくイッセイ ミヤケを着ている気がする、とも思っていたそうです。

そして、三宅デザイン事務所への切符になるかもしれないと、若手デザイナーの登竜門ともいわれる「装苑賞」を目指します。
ロンドン時代にも試みていた、テグスや針金といった通常では用いない素材を使ったニット制作を、コンピューター・ニッティングに応用して試行錯誤。
プログラミング・ニットのポテンシャルの高さを確信するに至り、最終的に太い天蚕糸を編み込んだ有機的なフォルムの作品をもって、見事に装苑賞を獲得します。
作品をリアルに着られる洋服に落としこんだものを山ほどつくって面接に挑み、三宅デザイン事務所への入社も決めました。

入社後は、三宅一生氏その人が率いる研究開発チーム「リアリティー・ラボ〈Reality Lab.〉」に参加。
熟練の技術者が若手と組んで、イッセイ ミヤケのものづくりを継承し、ファッションの可能性を多方面から追求するという取り組みは、高橋氏にとっては学校とはまた違った教育の場のようだったといいます。
「再生と再創造」をキーワードに、日本の伝統技術×最先端技術で、革新的で美しいデザインを生み出していったチームのエスプリは、CFCLにも確実に受け継がれているものです。

2011年の東日本大震災に関連して、東北の和紙に着目したプロジェクトを手がけたリアリティー・ラボ。
その後の「和紙でメンズの服を作ってください」という三宅氏のディレクションをきっかけに、高橋氏は2013年春夏コレクションから「ISSEY MIYAKE MEN」に参加することになります。
そして、入社3年・若干27歳にして同ブランドのデザイナーに抜擢・就任。
退所までのおよそ6年半もの間、ブランドを率いました。

会社やチームと三宅一生氏から高橋氏が受け取ったものは計り知れないといいます。
日本のアイデンティティを持ってパリ・コレという最高峰の舞台で戦えたこと。
ファッションを常に文化として捉える姿勢。
確かな技術力で本質的なクリエイションと人間性に真摯に向き合うこと。
技術と革新で領域を超えて取り組み、世の中を良くしようという想い。
服を作ることは社会を作ることだということ。

そんな高橋氏が、自分のスタイルややりたいことを貫くブランドをつくろうとしたときに大切にしたのが「社会のための服づくり」なのです。
ブランド名「CFCL」=「Clothing For Contemporary Life」そのものに、ありったけの想いが込められている、と感じます。

3.CFCL〈会社・ブランド〉の歩み

出典:fashionsnap.com

CFCLは2020年の設立当初からディレクターの背景やブランドのメッセージ性で注目を集め、デビューコレクションにおいて国内外あわせて40件の卸先を決めるなど、順調なスタートを切ります。
先行POP UPの初日から驚くほど多くの関係者や顧客を呼び込む類い希な求心力で、元々の高橋氏のファンのみならずさまざまな層のファッションラバーを魅了。
その後も快進撃を続けています。

【CFCLの立ち上げから今日に至るまで】

CFCLが立ち上がったのは、日本でもSDGsが意識され始めた時期で、衣料品の大量生産・大量廃棄問題にも注目が集まっていました。
さらに設立直後からのコロナ禍で、ファッションは「不要不急」であるとされたタイミング。
「なぜさらに新たな服をつくるのか」という問いがCFCLにも突きつけられました。
しかしこの状況は、よりプラスに作用したといえるかもしれません。
社会的責任を全うするために設立した意義が強まり、人々の行動変容を受けて「現代生活のための衣服」について改めて考える機会にもなったからです。
コロナ渦の渡航制限で、グローバルな展開についても懸念されましたが、ロックダウンなどの制限が強かった海外ほどオンラインの需要が増加。
消費者・バイヤーにとって、ビジュアルとフィロソフィーがブランド選定の決め手となり、その両面で確かな優位性を持っていたCFCLは、予想以上の売り上げを記録しました。

創設から1年あまりで「毎日ファッション大賞 新人賞・資生堂奨励賞」と「FASHION PRIZE OF TOKYO」を受賞。
後者のプライズ企画のサポートを受けて、VOL.4シーズンからパリ・ファッションウィーク(パリ・コレ)への公式参加も実現させています。

社会的責任やトレーサビリティを第三者的に証明するべく取り取り組み続けていたB Corpについても、まもなく認証を達成。
日本のアパレルブランドとして初めて国際的基準のB Corp認証を受けたことは、国内外に大きなインパクトとして広がり、CFCLの信頼性を確かなものにしました。

2022年秋には初の直営店を表参道にオープン。
「B Corp取得」「パリ・ファッションウィークへの参加」「直営店のオープン」の3つは、高橋代表が考える、世界で戦うために必要なベースです。
すべて揃ったこの時点からまた新たにスタートする気持ちで、グローバルにブランドの認知度を高めていきたいと話しています。

4.CFCLの現在と未来

出典:mistore

2022年11月現在でのCFCLの取引先は、国内外あわせて210件程にのぼります。
2023年1月に卸すVOL.5コレクションは、海外でも実際に見てもらえるようになり、コロナ渦でオンラインのみだった前シーズンと比較して、国内は約10件・海外は約40件増加しました。
国内のドア数はほぼ最大となり、海外との取引も半数を超えて順調に推移しています。

今後国内では、卸先との関係をより戦略的に構築するとともに、直営ショップもインバウンドの伸びを見込んで着々と運営していく構え。
東京にある会社として、国内のショップとだからこそできる企画などにもしっかり取り組みたいとのことです。
海外についても着実に売り上げを伸ばすべく、エリアごとに異なるオケージョンに合わせて対応デザインを増やしたい考えており、さまざまな分野の個人・組織から声をかけてもらってもいるので、世界規模でも柔軟におもしろい連携を模索したいといいます。

デザイナー自身がワクワクできるような、現代生活に則した素敵なニットのクリエイションをし続けていきたいというのが第一。
ただし、社会的責任や透明性など、会社全体でCFCLの理念をしっかり守りながら成長していきたいという意気込みです。

4-1.進化するコンテンポラリーデザイン

出典:fashionsnap.com

トレンドや流行に左右されず、長い間愛され続けるCFCLのコンテンポラリーな洋服たち。
ファッションブランドにありがちな、ワンシーズンのみでの価値の低下はほとんど起こらず、ニーズに沿って何シーズンでもその価値を保ちます。
しかし、それはCFCLの衣服が変化や進化をしないということではありません。
現代生活というものの中身は、世界各地で異なり、時の経過によっても変わってくるはずで、CFCLのプロダクトは、その多様性に対応して発展していくはずです。
ここではCFCLの代表的なデザインの特徴をご紹介しつつ、進化する現代生活のためのクリエイションに迫ります。

4-1-1.時代のエレガンスを体現〈POTTERY・FLUTEDシリーズ〉

出典:CFCL

CFCLを象徴する2大人気デザインが、壺のような丸みのある形状から「POTTERY(ポッタリー)=陶器」と名付けられたシリーズと、ギリシャ建築の柱を連想させる織り具合から「FLUTED(フル―テッド)=柱の縦溝」と名付けられたシリーズです。

中でもPOTTERYのドレスとカフタン(ドレス)は不動の人気を誇ります。
上の画像の左下と右下がPOTTERYドレスで、右の真ん中がPOTTERYカフタン。
カフタンは、袖口のシルエットがPOTTERYのネーミングの由来です。
エレガンスが香る立体的でしなやかなボリューム曲線が最大の特徴で、どちらも今までのニットのイメージを覆す女性らしく洗練されたデザイン。
気軽に着られるけれどワンピースの印象とは違う、ドレスという呼び方が似合うプロダクトです。

POTTERYのファーストコレクションは先行発売されるやいなや瞬く間にソールドアウト。
ラメ⽷をミックスしたGLITTERシリーズが登場した際などは、SNSでの小規模告知のみで、店頭に並ぶ前に完売しました。
2023年4月現在では、幻のカラーリングともいわれた1st.カフタンとスカートが、タイムレスなアーカイブとして伊勢丹にて再販され、当初と変わらぬ高い人気を誇っています。

画像の上部と真ん中の4点が該当するFLUTEDシリーズについては、ドレスのほか、カーディガンがジェンダーレスに人気です。
身体のラインを拾いそうなタイトさで着こなしが難しそうに思えるドレスでも、実際に試着すると締め付け感のなさや軽さに驚き、逆に体型がカバーされて着やすいと感じる人が多いそう。
カーディガンは、表情豊かで上品なデザイン・シルエットと、しわを気にせずコンパクトに持ち歩いて着回せる気軽さが、男性からも高い支持を集めています。

どちらのシリーズもさまざまなアイテム・デザインがラインナップされており、同シリーズ同士の組み合わせも素敵なので、いろいろなタイプを揃えたくなること必至です。
今後はどんなエレガンスを体現してくれるのかと、期待に胸が膨らみます。

4-1-2.無駄を削ぎ落としたダイバーシティ

出典:CFCL

削ぎ落とされたミニマルなデザインも、CFCLプロダクトの大きな魅力です。
現代に必要のない要素を省くことで、シルエットがすっきりシャープになり、メンズとウィメンズの差も縮まります。
身体から離れたアウトラインでよりジェンダーフリーに。
その分3つのサイズ展開もシンプルで、基本は性別によらない1≒160cm、3≒170cm、5≒180cmの身長別です。

出典:pen-online

意識しているのは、伝統的なアイテムのディテールについても、現代の生活に必要かどうかを考えて整理すること。
例えばテーラードジャケットは、ラペル(襟)はジャケットたらしめるためそのままに、フロントボタンは実際に使う1つ分だけに絞ってフラップポケットはサイドスリットへと移行させています。
ミリタリーアイテム、例えば「MA-1」についても同じです。
たっぷりとした身頃・短い丈といったMA-1らしいかたちや、ファスナー・袖口のリブといったアイコニックなデザインは残し、襟のリブははずしてきれいな立ち襟に。
最小限にした切り替えや、身頃から続くリブに上品さが漂い、あえて縫い目を出したポケット部分などにさりげないこだわりが光ります。

随所に工夫を施し、あらゆるTPO・ダイバーシティに適応させた、実用的で洗練されたベーシックはかなりの充実度です。
絶妙な高さのモックネックや後ろ身頃の長め丈でフォーマル感を高めた上質なTシャツ。
糸の種類を厳選してハイゲージに編んだ、柔らかくなめらかな生地感のドレスシャツ。
ベルトの高さや絞り具合が調整でき、フェミニンにもマスキュリンにも振れるコート。

これから登場する新たなミニマルデザインも、バック中央に配されたまっすぐなリブがCFCLブランドであることを静かに主張し、多様な現代生活をより豊かに導いてくれることでしょう。

4-1-3.多様な日常に馴染むモード感

出典:CFCL

シーズンテーマである「生活に則した器〈knit-ware〉」という概念も、その芯は変わらないまま少しずつ変化しています。
例えば2ndコレクションでは、建築物を参照して、より大きな意味での〈knit-ware〉を提案。
最新のコレクションでは、社会や自然の背景にある普遍的とも言える法則・数理モデルとしての関数に着目しています。
そんなシーズンごとの新たな創作では、よりモードなセンスを感じさせる、それでいて現代の多様な生活にもさらりと馴染むデザインが多く登場。
画像はVOL.3シーズンの一部のプロダクトですが、どれもカラフル・軽やかに洗練されています。
右下で着用しているロングコートは、木製の格子状フェンスを意味する「LATTICE」のネーミングどおり、立体的で透け感のあるテクスチャが特徴的。
ニットとは思えないほど涼やかで、大きく入ったサイドスリットから直接パンツのポケットに手が届く利便性も備えています。

波うつシルエットがユニークな、異なる編み地とポップなカラーが重なりあったバッグたちは、地層の複数形を意味する「STRATA」シリーズのもの。
唯一無二の存在感でコーディネートを明るく彩ってくれる、軽くてコンパクトかつ気軽に洗える、現代のバッグです。
「ニット×モード」のコンテンポラリーデザインも、日常の求めに応じて多彩に進化し続けます。

4-2.世界的なコレクション展開

出典:CFCL

設立当初から常に世界を見据えているCFCL。
パリ・コレクションへの継続的な参加を目指すとともに、ショップ展開の面でもオンラインとリアルの両面からグローバルに仕掛けています。

4-2-1.パリ・ファッションウィーク〈パリ・コレクション〉参加

出典:CFCL

「FASHION PRIZE OF TOKYO」受賞による支援を受け、創設からおよそ1年半後のVOL.4コレクション(2022年秋冬)でパリ・ファッションウィーク〈パリ・コレ〉への公式参加を果たしたCFCL。
VOL.5コレクションでは初めてリアルなモデルを起用したプレゼンテーションを行い、最新のVOL.6シーズンについては、ショー形式での発表を行いました。
グローバルな注目が集まり、日本企業としての責任がより大きくなる場で、まったくのニューカマーというスタンスから、ブランドの世界観や考え方をさまざまな手法で着々と伝えてきています。

常に「新作」が価値を持つパリ・ファッションウィークですが、その場でこそCFCLが問いたいのが「新しいもののほうに、より価値があるのか」ということ。
より普遍的に長く愛されることを重視し、まったく新しいデザイはコレクション構成のわずかうち10%のみというCFCLが、その価値観をパリで問うことは挑戦でもある大切なことだ、と高橋代表は話しています。

4-2-2.リアル&オンラインショップ

出典:gyre-omotesando

ショップ運営においても戦略的なグローバル展開を着々と進めているCFCL。
オンラインについては、コロナ渦の行動変容もプラスに作用し、国内ECも越境ECも順調に推移しています。
2022年秋には表参道のファッション複合ビル内に、初めてのリアル店舗であり旗艦店となる「CFCL OMOTESANDO」をオープン。
翌年3月の東京ミッドタウン⼋重洲グランドオープンと同時に2店舗目の直営店である「CFCL YAESU」の運営も開始し、同月に1年間の期間限定で六本⽊の東京ミッドタウンにも「CFCL ROPPONGI」をオープンさせました。

CFCLの世界観を体感できる場所として、それぞれの直営ショップにはロケーションに合わせた役割が付加されています。
OMOTESANDO:旗艦店・実験を重ねるコンセプトストア
・すべてのアイテムを取り扱い、進化する独自の世界観を発信し続ける
・毎月季節性のあるプロダクトを面で見せつつ、シーズンに応じて什器や壁面のビジュアルも変化させる
YAESU:世界中の顧客を迎え⼊れる⽞関⼝
・ブランドの代表的なアイテムを揃える
ROPPONGI:都市部の居住エリアでの生活に対応
・⽇常⽣活からオケージョンまで対応できる、オールラウンドなアイテムを揃える

いずれ関西エリアにもショップを持ちたいというCFCL。
インバウンドが戻ってきている今を、認知度も売り上げも伸ばせるチャンスと認識し、しっかりした直営店運営に取り組んでいます。

4-3.B Corp認証企業としての責任と透明性の追求

出典:CFCL

CFCLは、設立時から徹底的に社会的責任や流通の透明性を追求し、厳しい審査を経て、公益性の高さを世界的に証明する「B Corp」認証を達成しました。
B Corp企業として承認されるためには、自社のみならずサプライヤーや地域社会まで巻き込んで多くのアクションを起こす必要があります。
具体的にはどんなことを行ったのか?ここではCFCLのコンシャスネスの詳細に迫ります。

ファッションは生活者にとって身近な存在で、多くの人が関わってもいるため、広い範囲の人々の心の持ちように大きな影響を与える可能性があると高橋氏は指摘します。
だからこそCFCLは、3年に1度のB Corpアップデートに向けても、日々全力でひとつひとつに向き合う構えです。

なお、画像はCFCLのオンラインストアに用意されているギフトバッグで、ハンドルも含めたすべてに、適切に管理された森林から作られた認証取得紙が使われています。
さらには、ギフトバッグの役目を終えた後もさまざまに使いやすいデザイン。
こういった細かい部分に触れると、CFCLの素晴らしさがより実感され、確かに自身の心持ちにも影響していると感じられます。

4-3-1.LCA〈ライフサイクルアセスメント〉の実施

出典:CFCL

CFCLの最も特徴的な取り組みが、B Corp認証と同様に日本のアパレル業界では初となる、環境負荷を可視化するためのLCA〈Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)〉の実施です。
LCAは、国際規格に基づく信頼性の高い手法で、製品が生まれる瞬間から廃棄後までのトータルでの環境負荷や影響を評価できます。
単に“POTTERYドレスの素材は100%再生素材なので、石油由来の商品より環境に良い”と言った場合、それは素材の調達段階での「限定的」な評価で、「具体的にどの程度」環境に良いのかも分かりません。
その点LCAなら、「全工程のどの部分がどの程度」かを明らかにできます。

LCAは、CFCLが大目標として掲げる脱炭素社会や循環型社会の実現には欠かせない取り組みです。
CFCLは公式サイトで「CONSCIOUSNESS REPORT」と題してLCAをはじめとする取り組みについての詳細を発信しており、広く意見を募る場にもしています。
その内容を参照すると、VOL.4の段階までに対象商品を拡大しながら検証と改善を繰り返していることや、POTTERYシリーズで最大30%に及ぶ温室効果ガス排出削減を達成できたことなどの事実確認が可能です。
現状の課題や将来に向けての改善方法、またその意義などについても具体的に記載されており、CFCLの透明性と責任を実感できます。

4-3-2.クリーンな素材調達とアップサイクル

出典:CFCL

再生素材・国際認証を受けている素材の使用率向上についても、CFCLは力を入れて取り組んでいます。
具体的には、量産で使用した主な素材のうち、地球環境や基本的人権について国際的な基準を満たしている素材の使用率を継続的に公表していく考えです。
2030年までに、全製品における再生素材を中心とした認証取得素材の使用率を100%にすることを目指しています。

公表されている最新のVOL.4コレクションでの使用率は「76.54%」と7割を超えており、ファーストコレクションの「58.12%」からも飛躍的に増加。
原料や素材のメーカー各社とも協力してより良い素材を開発するなどの試行錯誤を続け、100%の目標達成に努めています。

素材の面では、製造後に出る余り糸を無駄にしないためのアップサイクルも実施。
画像はアップサイクルの糸で作られたFACADEシリーズのトップスです。
これぞモードといった感度の高い趣ながら、スウェットのように着られてシンプルな服とも合わせやすいと、多くのメディアで取り上げられました。

4-3-3.SDGs全体に対するパートナーシップ

出典:bcorporation.net

SDGsの17の目標が示すように、企業が取り組むべき課題には、環境問題に加えて人権に関することも多く含まれています。
CFCLがB Corp企業としてあり続けるためには、それらのすべてに対応していかなければなりません。
まずはサプライチェーン全体の課題解決に注力する必要があり、そのためにはCFCLに関係するすべての企業や人々の協力が必須です。
CFCLでは「SDGs Performance Guideline」を策定して取引先各社にアンケートを実施。
LCAも活用し、ひとつひとつ共有・点検する取り組みを進めています。

また、CFCLのB Corp評価項目の中でも最も伸び代の大きい「コミュニティ」への対応も、重視されるべき課題です。
日本の東京で事業を行うCFCLにとっての重要なコミュニティと考えられる地方の繊維業界について、各課題の解決を目指すためにも、策定したガイドラインを活用。
相互的に利益を生むような企画も行いながら、コミュニティとの信頼関係を構築し、パートナーシップで課題解決できるよう努力を続けています。

5.まとめ~CFCL最新情報とあわせて~

出典:CFCL

高橋悠介氏は、知性で感性を操り、自身のファッションに対する想いや考えを言葉できちんと表現できる、希有なデザイナーであると思います。
CFCLにミューズはいないがペルソナはいる」「ユニセックスではなくジェンダーフリー」など、どんなことに対しても自分なりの明確な考えが存在しているのです。
それはとりもなおさず、CFCLというブランドの核が、しっかりとして揺るがないということではないでしょうか。
ブレない芯を持ちながら、時代とともにフレキシブルに変わっていける。
信念に沿って具体的な行動を着実に起こし続けていける。
そんな信頼感のあるCFCLだからこそ、着る人の心や行動に大きな影響を与え、社会にも大きなインパクトを与えていくことができるのだと思います。

今この記事を書いている私も、はじめはCFCLのドレスデザインに惹きつけられたひとりです。
そして、取り組みや考え方について知れば知るほどCFCLへの愛着が深まり、自分も何か素敵なことをしたいな、という気持ちになっていったひとりでもあります。

2023年3月に新たにオープンした八重洲店には春色のドレスが並び、4月にはまっさらな白磁器に入ったみずみずしく凜とした香水が発売されました。
6月には、現時点で最も温室効果ガス排出量が少ないとされるアシックス社のシューズをベースにした、コラボスニーカーも登場予定です。
きれいな色の着心地の良いドレスに包まれて、透明な香りを纏い、背筋が伸びるスニーカーで軽やかに歩いていく。
行く先はずっとクリーンで、とおりすぎた道にも不純なものは何もない。
そんな想像をするだけで心が弾むのは、私だけではないはずです。

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