買えない!先行予約でも瞬時に完売する。アパレル業界の闇 「衣料ロス」を受注販売が解決する?

収穫したら順次お届けします。お天気に左右され収穫時期を約束できないフルーツや需要と供給のバランスが合わない人気のスイーツ店で「予約販売」という売り方を見かけることがあります。

有限会社ミキファーム | 宮崎県児湯郡 (miki-farm.co.jp)
été | Fleurs d’été(フルール・ド・エテ) (ete.tokyo)

個人的な嗜好ですが、フレッシュのライチや、エテのマンゴーケーキ、東京の村上開新堂のクッキーにおいては予約の方法すらハードルが高いとされています。

近年アパレル業界でも「予約販売」の商品を見かけるようになりました。

お値段のかさばるコートなどでは、これまでも「受注会」もしくは「予約注文」は珍しいことではありませんでしたが、一般的なブラウスやワンピース、そしてお値段も比較的リーズナブルなものでも「予約して買う」もしくは「予約しないと買えない」「予約の数量を鑑みて生産する」商品が増えてきました。

予約すらできない 人気ブランド

〇月〇日より「予約受付開始」で、お渡し日は2か月先。受注数をまとめてから製造するにも拘わらず「売り切れ」の表示。  ってことは初回販売予定数が終了しましたってこと!?書籍でいうなら初版完売。 まだ販売は先だし、事前にクレジットカードで支払いも済ませるわけだからもっと生産数を増やして注文を受け付けてもいいのでは?

もしかしたら初回の予約販売だけで販売は終了。もう購入することができないのかもしれない。

「入荷の案内を受け取る」のボタンもありますが、こんなに人気なのだから望み薄いかもしれません。買うことができないとますます欲しくなる。そんなかたはフリマサイトに出てくるのをこまめにチェックするか、転売ヤーからプレミア価格で購入するか、リセールショップの入荷をこまめにチェックすることになってしまいます。

予約注文分も争奪戦となっている状況の中、シーズンのサンプル商品を見て予約することができる夢のような受注会も行われていたりするのですが、当然参加するのは至難で、予約会入場の抽選。もしくは過去の購入実績による優良顧客優先での予約会となっているようです。こんなHOTなブランドが生まれてきています。

手の届きにくい高額な商品ではなく納得のお値段で、おしゃれインフルエンサーが素敵に着用している。ファッション雑誌が仕掛けるのではなくおしゃれな人たちのSNSでひそやかに伝播されていく。量販されていないので買いたいけれどなかなか買えない。そんな付加価値もついてますます買いづらい状況を作り出しています。

実際の販売店舗を持たない、販売代理店にも頼らない、オンラインサイトでメーカーが直接販売するスタイル。SNSやネット広告で直接消費者とつながることができる現代の販売方法です。

yori/shirocon

デザインの“甘さ”加減がちょうどいいyori(ヨリ)

子育ても仕事も楽しむデザイナー2人が作るブランドは
消費者目線を大切にしているからこそ、デザイナーと同世代の30代~40代女性たちの「着たい」にジャストフィットします。

そして、より上質な素材とディテールにこだわり作られる新しいライン
2021年春よりスタートしたshirocon(シロコン)

大人が“かわいい”を上手に楽しめるアイテムが豊富です

yoriは買いたくてもなかなか買えない

WEBサイト yori/shirocon

LOHON

2020年にスタートしたばかりですがインスタグラムではクールでスタイリッシュなデザインが人気です。

ブランドが発信するコンセプトは 服を愛すること、価値観を共有できる同志に届けるようなメッセージです。

大量生産することをやめ、”欲しいと思ってくれる方に届けられる分だけ作る”生産スタイルを選びました。削ぎ落した分、労力もコストも大切なアイテムにかけることができるように構築し、変化するライフスタイルに合わせてデザインをアップデートしながらも、10年後も、ワードローブのスタメンでいられるような【捨てられない服】を作りたいと考えています。私たちにしかできない新しい時代の”アクセシブルラグジュアリー(手の届くラグジュアリー)”を目指します。

https://www.lohen-official.com/
新しいブランドローヘン

WEBサイト LOHON

foufou

「健康的な消費のために」とデザイナーのマールさん。インスタグラムやNoteでも骨太な洋服への情熱を語っています。

受注会とは呼ばずに「試着会」 真面目にお客様へいいと思うものを届けるシンプルきれいなブランド。インスタグラムのフォロワー数7万人を超える。

フーフーは静かに人気のブランド

WEBサイト foufou

<2022年8月10日 追記>
販売店舗を持たないブランドと記載しましたが、foufouは 東京都目黒区祐天寺 に店舗を作ることになりました。
予約販売ではなく在庫を置いて即時お持ち帰りすることが可能になるようです。

ロスをゼロに近づけることはこの時代に大切なこと

外食での「予約販売」

私は月に1度ワインをテーマに集まる食事会に参加しています。洋食だけでなく和食やお寿司屋さんの場合もありますが、利用するお店は大きくない個性的なお店が多く、ほとんどが「要予約」のお店。席数は多くないこともありいつも満席の状態。予約の段階でお料理のコースも決めるので、お店側は材料の仕入れにロスがない。当日に参加人数が減ることはキャンセル料をお支払いして可能でも、増えることは叶わない。
全て予定通り。 お店は使うものだけを仕入れるので無駄がない。食事をする私たちも今日のために作られる鮮度の高いもので、コストパフォーマンスの最大値を享受できので、お互いにWIN WINです。フレンチやイタリアンのコース料理のように和食やお寿司屋さんでもお品書きや「おこのみ」か消え、はじまりから終了まで流れるようにいただく「おまかせ」の一択のみ。この方法なら食材のロスは最小限に抑えることができ計画的に営業ができるのではないかと感じます。

おまかせ一択のお寿司屋さん 新潟 兄弟寿司

実は・・・食品ロスより深刻な衣料ロス

世界中で1年間に9億トンの食糧を廃棄していると食品ロスが問題になっていますが、実はそれよりも大きな数字になっているのがアパレル業界です。2018年にバーバリーで余剰在庫の廃棄処分が問題になったことがありました。

英バーバリー、42億円相当の売れ残り商品を焼却処分 – BBCニュース

↑ 値引きして売ることはブランドの価値を下げる 人の手に商品を渡すことになるため、過去5年間で130億円分の商品を焼却処分した。その中には動物由来のファーやウール、レザー製品も含まれていたことで問題を大きくした。

そんなことはこれまでにどこのメーカーも行ってきたことで、ある程度の売れ残りはやむを得ないものと考えられているアパレル業界です。バーバリーが批判されたことで「とはいえ何を今さら・・・」「明日は我が身」と思ったのでした。それはグローバルブランドに限ったことではなく、国内のブランドにおいても同様です。

日本ではいったいどれくらいが売れ残っているのか?

やや古くなりますが、2018年の下記の調査によると日本国内で販売するために供給された衣類の約半分が売れ残っているという衝撃の数字です。

参考資料 (株)小島ファッションマーケティング
http://www.fcn.co.jp/thesis/wwd191213/

国内での生産量が2%~3%しかない日本。食糧自給率の40%が素晴らしい数字と思えるほど低い日本の衣料業界。ほとんど他国で作っているにもかかわらず、半分が売れ残っている。おかしすぎるでしょ。

  衣料の国内生産率を考える(コラム) 「原産国表示は気にしてる?」 

売れ残りがどうしてそんなに出るのか?

・「低価格ブランドは製造コストを下げるために大量のロットで発注せざるおえない状況であると。
売れ残ることがわかっていても製品を安くするために大量に作る? 一般人には本末転倒のように思えることですが、大量に作るから安く作れる。売れ残りを見越しても採算が取れるってことは どれだけ安く作られてるの?ってこと。でも安く作るために人件費や原材料は無駄になっている?ってこと?

大量の売れなかった在庫を抱え、それらを再販するための手間もかけていられない。保管する倉庫費用もかかる。売れ残った商品を処分するために、最善の策が廃棄処分


・「売れないものも陳列しなくてはいけない」
店舗を全国で展開する大きなブランドでは店内の景観や商品構成を考えると、売りやすいアイテムだけ、売れるものだけしか作らないというわけにはいかず、威信や自負をかけてトータルで提案できて、「来店したら目的のものがある」嗜好の違うお客様の多様なニーズに応えられてこそとも考えられて、需要にまさる大量の商品が必要となるのです。

それによりアパレル業界には食品ロスよりも根深い「衣料ロス」が存在しています。

余った服はどのようにして処理されていくのか

・店舗でのクリアランスセール
・ECサイトでのセール、アウトレット店舗での販売
・従業員や株主向けファミリーセール を行います。

この時点で当初の販売時期から半年~1年は経過しています。流行の早いファッション業界ではデザインが陳腐化するものも少なくなく、販売価格も当初上代(販売価格)の50%OFFから70%OFFとなっていることも珍しくありません。

極力セールをしない。安い価格で流通していないことでブランドの価値は保たれことを考えると、売れ残った商品の処分方法は悩ましく、新たな販売方法を模索しています。

ブランドのタグを付け替えて販売する  RENAME

廃棄を少なくする。ブランドの価値を損ねず再販することに挑戦しています。在庫処分される商品のブランド、品質表示・家庭用洗濯タグを外し新たなタグに付け替えて販売する方法がとられています。

アパレル加工工場でブランドタグや洗濯表示タグの付け替え加工を行い、
ブランド名表示を変更して再販します。元のブランド名を表示しないため、ブランドの権威を毀損せず再販が実現します。

ブランドネームに頼らない売り方
WEBサイト RENAME
https://c-fine.jp/rename/

ブランドという権威がなくなった商品がどれだけの価値を残すかが試されます。売れ残った商品に新たな手間(コスト)をかけて販売する。それだけの価値がある商品に限られ、損益を優先すると難しい選択です。

メーカー出資の専売アウトレットサイト

どこかでみかけたような・・・商品です。
WEBサイト上ではブランドの名前は一切出していませんが、某有名メーカーのアウトレットサイトです。アウトレット実店舗もありますが、より多くの人に届くようにWEBサイトが作られています。ブランドの価値を毀損しないようにという趣旨からしたらブランド名が一目でわかるような商品は除外されるはずですがカットソーのページにはブランドロゴがどーんとプリントされた商品も見受けられます。販売されている商品はブランドタグが切られていることもなく、1年前に店舗で定価販売されていたものと同じ状態です。これではブランドの価値を損ねず処分することにはなりません。

よりクオリティの高い服をより多くの女性たちへ。
丁寧に品質・流通管理をし”本当に欲しい人のところへ最後まで責任を持って届けたい”
そんな思いから生まれたのが 『ディフュジオーネ・テッシレ』
イタリア高級婦人服のアウトレットショップです。

WEBサイト diffusionetessile
https://www.diffusionetessile.co.jp/

それでも残ってしまった商品はどうなるのでしょう。

発展途上国への援助物資に

タグを切ったり、店舗を用意することもなくそのままの状態で衣料品に困窮している地域に送ることで処分ができるので、コストは低く抑えるこそができそうです。しかしながらデザインされ、華美な装飾がされた非日常的なドレスや高機能すぎるものは援助物資の目的としてふさわしくないものもあるでしょう。

素材をアップサイクル

カシミヤやウール、アルパカなどの高級素材だけでなくコットンやナイロン製品も化学処理を施して素材にもどしてリサイクルしています。リサイクルされた素材から再度製品を作り出しています。


このように環境に配慮したメーカーの努力はその証として公表していますが、その費用は新しい素材から製品を作るほうが安いと言われています。ネガティブな公表されない現実として廃棄処分されているのもまだまだ少なくないようです。

アパレル業界も「要予約」

大きすぎる「衣料ロス」の問題をかかえる現状のアパレル業界にも飲食店の「要予約」をあてはめて考えたらいいことのように思います。

売れないかもしれない。実際売れなくてセールになった。次のシーズンまで倉庫での保管。これらのロスを少なくするために「要予約」で欲しい人の分だけを作って販売する。

売れないことでの損失分が少なく、もしくはゼロになればメーカーも収益が良くなるし、ひいては予約で買った私たちのお値段にも反映されてくるかもしれないはずです。

・・・素人の考え。製造業のしくみを理解していない。と一蹴されそうです。

ロス は目に見える売れ残った衣類ばかりではないのです。売れたかもしれない機会損失、小ロットで作ることの時間と手間のロス。何よりも消費者の意識変化と現状の理解も必要です。

SPAブランドとのすみ分け

ロスがないことはいいことだ!といってすべてのレストランが予約制になったらとてつもなく不便なことと同じです。急にお友達と食事をしたいときに提供してくれるレストランは存在して欲しい。メニューは定番の5種類でいいから。でも通りを挟んだ先にメニューが30種類で安くて雰囲気もいいお店があったら絶対そちらに行くよね。結局消費者は便利なほうを選ぶのです。当然ながらその競争はよりよくをもとめられるのです。

製造から(工場を別会社、子会社、協力会社として)販売までを管理するSPA (speciality store retailer of private label apparel) といわれる大手の製造小売業はいつ行ってもお客様の要望を満たしてくれるという存在であって、服を4か月前から予約するなんて考えられない!という方には絶対必要です。インナーや着回しのきくアイテム、比較的流行にかかわらない類のものはそうあって欲しいです。

個性的なブランドや製品にこだわりを持ったブランドは「予約販売」という販売スタイルを積極的に採用して、それがスタンダードになっていったら衣料ロスの解消につながるでしょうか。

大手外食店と予約が必要なレストラン

大手SPAブランドとデザイナースブランド

役割を考えながら私たちも使い分けること

作られたお洋服が使われずに廃棄処分されるようなことを少しずつでも防げるようになるといいなと思います。

お買い換えで使う機会の少なくなったものは、しまったままにせず活用することも大切なこと。
もう使わないかなと思ったものは次のかたに使ってもらうこともご検討してみてください。

使ってくれる次のかたを探す方法は、メーカーの回収プログラム、フリーマーケット、バザーや寄付、どなたかまわりの人に差し上げる。などがありますが、私どもではお買取りをしております。お買取りりさせていただいたお品物は検品、採寸、商品を撮影して全国のかたにWEBでお届けしています。

宅配でご利用いただけます

全国どちらからでも宅配でご利用いただけます。
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