MADEINJAPAN

原産国表示は気にしてる? アパレル業界の日本製(MADE IN JAPAN)表記はどこから?

原産国の表示 確認する?しない?

何かを購入するとき原産地を確認していますか?
私は食品に関してはチェックする場合が多いですが、日用雑貨など口に入れないものの場合はチェックしないことのほうが多いかもしれません。仮にチェックをしてもその結果で購入することをやめたりはしないと思います。

  1. 食品は材料の原産国表示が必要になった
    1. 熊本県産「アサリ」事件
    2. イタリア産「トマト缶」
  2. 繊維製品の原産国表記は義務ではない
  3. 衣料品で日本製と表示できる条件は?
  4. 日本製はたったの20%
    1. MADEINJAPANと純国産品の違い
    2. 全てが国産の繊維製品は?
  5. 原材料からの日本製は ほぼ0
  6. みつけました!パーフェクト日本製
  7. まとめ

食品は製造地と併せて材料の原産国表示が必要

日本では原料原産地表示制度が2022年4月より義務化されました。
外食や店頭で販売されるデリカテッセンを除いては国内で製造された食品であっても海外からの材料で作られている場合は材料の原産国を表示しなければいけなくなりました。

お醤油の原材料原産国表示 大豆はアメリカ産です
<お醤油の原材料表記> アメリカ産の大豆を使っています

こちらのお醤油ですが 作られた場所は日本国内で日本製。原材料はアメリカ産。これまでは材料の原産国の表記は任意だったので、日本で作られているお醤油だから材料もたぶん日本のものなんじゃない?って誤解いただいてもよかったわけです。
2022年4月以降は国内の工場で作られたものでも材料を海外から輸入しているものは表記しなくてはいけなくなりましたので、食品の海外依存度合が可視化され日本の食物自給率の低さを実感できるようになると思います。

熊本県産「アサリ」

アクアパッツァ、クラムチャウダー・・・ボンゴレ、酒蒸し。我が家ではちょくちょく使うアサリ。先週もパエリアに入れるために買いました。今回は「三重県産」の表示がありました。

あさり
<ひと晩塩水に片栗粉を入れて太らせながら塩抜きします>

以前から疑惑視されていて2022年明らかになったアサリの産地偽装問題。過去にスーパーで買っていた「熊本県産」が実は「中国産」だったことが発覚しました。

調査の結果、熊本県産と表示し販売されていた97%が中国産のものだったことが報道されていましたので間違いなく私が買っていたものは中国から麻袋に入って熊本の干潟に数日漬けられたアサリです。

産地が日本だから「安心」と勝手に思ったわけですが、食肉、ウナギ、ギョーザ、チキン・・・過去に起こった問題から改善されて透明でクリーンになっているはず(と勝手に思い込んでいた)の日本で いまだにこんなことがあるのね。と驚き「ひどい!!」というのが正直な感想でした。

イタリアのトマト缶

Made in Italy と記載されているイタリアから輸入されたトマト缶。
中身のトマトは中国で栽培・収穫された正真正銘の中国産ですが、トマト缶はMade in Italyとなるわけです。中国から輸入した濃縮トマトピューレやトマトをイタリア国内で缶に詰められているのです。さらに工場は中国の資本で、労働している人も中国から来た人たち。

トマト缶は手軽に煮込み料理で使える頼もしい素材なのに・・・
<トマト缶は手軽に煮込み料理で使える頼もしい素材です>

原材料のトマトはイタリアに輸入、全量を缶詰にしてイタリア国外に出すことでイタリアでの関税がかからない。そうなると輸送コストをかけても中国で生産されたトマトをイタリア製トマト缶に仕立てる付加価値は十分採算に見合いそうですが、この表示も日本では缶詰自体が輸入品ですので日本の原料原産地表記制度は適用されません。

アサリのことでいえば 食品表示法に定められている2か所の国で育った水産物は1日でも長く育成されたほうの国を原産国とするというルールがあります。今回の件はそのルールを適用したうえで育成した日数を改ざんしていました。改ざんしているので完全に偽装なのですが、そもそも出生地や親種の産地に一切かかわりがなくなってしまうことは合理的に表示するためのルールとして理解できるとしてもなんだかモヤモヤするところです。

食品以外の原産国は気にしてる?

口に入れない日用品や衣料品はいかがでしょう?原産国を確認していますか?

気にしない。もしくはあまり気にしない。というかたが食品に比べると増えてくるのではないかと思います。

そもそも消費者庁では家庭用品(電化製品はのぞく)、繊維品については原産国の表示義務を課していないのです。製品それぞれの業界団体で表記を推進している場合が多く、任意で原産国表記をしているのが実態です。

 

繊維製品の原産国表記はなくていい

繊維製品は原産国の表示義務はなくても、素材の構成や洗濯方法などの表記は細かく決められていて表記の義務があります。
素材の構成表記に関しても綿は漢字で「綿」、カタカナで「コットン」、英字で「COTTON」と表記してもよいことになっていますが、麻の英字表記「RAMIE(ラミー)」や「HENP(ヘンプ)」は認められていません。繊維の名称の記載方法や繊維の組成、撥水性、各素材の割合を示すパーセンテージの「以上」や「未満」の表示にまで(そこまでルールつくる必要ある?というくらい)細かい定めがあります。同様に洗濯等取扱方法の表示に関しても細かいルールがあるにもかかわらず、繊維製品の原産国に関しては表記の義務はありません。

原産国の表記は消費者が製品そのものを選んだり、使ったりする点においてはさほど重要ではないと考えられているからでしょうか。ですが消費者の利益保護するためにある景品表示法では消費者に誤解を与えるような表示をしてはいけないことになっています。

義務はなくても惑わすような表記はNGです

原産国の表記は義務ではないけれど 国内で製造された製品の品質表示タグにフランスの国旗を描いたり、フランス語で商品の説明を書いたりするのは消費者に「フランス製?」と誤解させてしまうのでNGとなっています。

海外ブランドのライセンス品を日本で作った場合は海外で作られたものと誤解を与えないように 「日本製」や「海外ブランドのデザインをもとに国内で製造しました」などと記載しなければいけないことになっています。

フランスのブランド LEONARD PARIS を国内でライセンス生産している三共生興ファッションサービス株式会社では、ライセンス品の表示はブランド名からPARISを取って LEONARD とし、製品には LEONARDFASHION もしくは LEONARDSPORTS とブランドタグを付けています。国内で製造されたライセンス品ですので品質表示タグには MADE IN JAPAN と表記しています。

 

アパレル製品のMADE IN JAPANはどこからが日本製?

そもそも製造国の表示義務がないが業界団体で決められている

先ほども説明しました通り、繊維製品の原産国表記の義務はなく任意で記載しているということです。現在、日本製と表示できるのはニット生地から製造した衣料品は編立または縫製、織物生地から製造した衣料品は縫製を行った場所をそれぞれ原産国としています。
そもそも原産国の表示義務がないわけですので、どの製造工程からを日本製とするかを定める法令はありません。上記の定義はファッション、アパレルの業界団体で社団法人日本アパレル産業協会 で定めた任意の規格になります。

社団法人日本アパレル産業協会 による
原産国表示マニュアル

海外で作られた製品に刺繍だけ施すことやパーツを組み合わせるだけの工程を国内工場で行っても国内で製造したと認められていません。

縫製をした場所が製造国

繊維製品が糸から形になるまではたくさんの工程があり、分業されてますが、ざっくりと表現すると最終の縫製工程を国内で行った場合に MADE IN JAPAN と表記することが可能になるのです。

安価な生地を東南アジアから輸入して日本で縫製したら 日本製 となり
高価なイタリア製の生地を使って日本資本の会社が技術指導をして中国の縫製工場でつくられたものは MADE IN CHINA となります。
日本国内にある海外資本の工場で海外から労働者として来日している人が縫製しても 日本製。

決して日本製がよくて東南アジア製の品質が劣ると思っているわけではなく
むしろ表示のされかたに騙されてはいけない。トマト缶のように表示のされ方を理解することで誤解を防げるのではないかと思うのです。

MADE IN JAPANと純国産品

縫製を行うと日本製になるということでした。最初に書きました2022年4月から義務化された食品の原料原産地表示制度に照らして日本製の衣料品を表記してみます。

例えば日本製と書かれたシルク・コットンのブラウスも

名 称 :ブラウス
原材料 :コットン(インド)シルク(中国)シェル製ボタン(エビを扱う共通の設備で製造しています)
備 考:コットン(インドネシア)シルク(中国)で紡績、ベトナムで染色、織布された生地を用いて国内で縫製いたしました。
原産国  MADE IN JAPAN

となってくるでしょうか。

純国産品へのプロジェクトJ∞QUALITY

日本の繊維業界の復活を図るべく日本製にこだわり「純国産」として世界に発信する取り組みが行われています。

2015年から行われているJ∞QUALITYのプロジェクト

「J∞QUALITY」は、日本(Japan)が誇る、品質(QUALITY)を限りなく(∞)追求して、
世界に向けて発信していくことを使命に掲げ、日本のアパレル需要の創造と、繊維・縫製産地の活性化を目指しています。
従来のMADE IN JAPANを超え、「織布・編立」「染色整理加工」「縫製」「企画・販売」、そのすべてを日本国内で行った商品のみ「J∞QUALITY認証商品」の統一ブランドとして認証されます。これは、モノづくりにおける品質を限りなく追求した日本製であること、各工程の背景が見えること、安心して購入できる安全な商品であることを意味します。
WEBサイト: J∞QUALITY

 

縫製だけで日本製としている定義をこのプロジェクトでは「織布・編立」「染色整理加工」、「縫製」「企画・販売」を国内で行うこととして「純国産」と定義しています。

しかしながらそれでもそれより遡った以前の工程である原材料の生産(コットンやリネンの栽培、採取)糸にする紡績は国外で行ってもいいとお見逃しいただいています。

国内で流通する衣料品の20%程度が縫製のみを行う日本製で、このプロジェクトでいうところの純国産品は全体の3%程度にすぎないということです。(ここでの定義が純国産の認識でいいかどうかは別ですが)

食料の自給率が40%弱でも低いと言われていますが、衣料品の自給率3%という数字はほぼ目に見えている服は「どこかの国のだれかが作ったもの」という状況は異常事態かもしれません。

日本製がいいという信仰ではなくコロナ禍を経験して食品のみならず海外に頼るサプライチェーンを見直す動きに対して、消費者の意識も変化していかなければいけないように思います。

消費者に求められる意識

 

原材料から国産は無理ゲー

コットンのできるまでをかいた
ブログ:糸を紡ぐ-綿(コットン)が原料から糸になるまで-

栽培 → 採取 → 紡績 → 織布 → 染色 → 縫製 

 

これが製品化の工程となりますが、国内で麻や綿の原材料生産は極めて低く、栽培から国内で行われている正真正銘純国産の繊維製品は宮中で使用されるような特殊な衣類や装飾品に限られ一般的な衣料品ではほぼゼロになります。国土の狭い日本でそれを行う必要

紡績から行っている工場があった

国内で唯一(と書いてありました)紡績から・染色加工・縫製まで一貫して行っている企業があります。イチボウとよばれる第一紡績
 ↑ こちらの紡績工場を見学したブログ (ほぼ日刊イトイより)
ブログ:紡績工場を見学してきました
ブログ内にコスト高になってしまう紡績を国産にしている理由が書いてあります。国内唯一の紡績から一貫して製造する工場 ここが限界地点です。この工場で使っている原材料はオーストラリア、アメリカから輸入しています。

 

みつけました!パーフェクト日本製

材料の栽培から行っているところ…衣料品では探せませんでしたが、今治市に耕作放棄地を活用して綿花の栽培から製品化しタオルとストールを一般に販売している
しまなみコットンファーム がありました
素材・紡績・製織、全て国内で行った、“Perfect Made in Japan”
化学薬品・農薬を一切使用しないオーガニック農法にて生産し、また枯葉剤なども使用せず、手で一つずつ収穫して作られています。これが完全な国産の繊維製品です。

 

まとめ

過去の日本の綿花、麻の自給率は、戦前には比較的高い水準にあったものの、戦後は急速に低下しました。戦前の1930年代には、綿花の自給率は約30%、麻は50%でした。戦後の復興期には、食糧自給率の向上に優先的に取り組む必要があったため生産は縮小され自給率は急速に低下しました。その後、1960年代には綿花の生産量が増加したものの、現在の自給率はわずかに1%未満、麻においては0.01%というほぼゼロの状態です。衣料品の原材料を輸入に頼ること自体は、必ずしも問題があるとは思えません。多くの国々が異なる品目を輸入し、輸出を行うことで国際的な貿易が成り立っていますしコスト面でも国内生産では高価になることは必至です。日本は国土が狭く、自然条件も最適な地ではないため効率的ではありませんが戦前に実現されていたように自給率は現在のゼロよりも高めることができるはずです。それが必要かが大前提ですが、今回のコロナ禍やウクライナ戦争で体験した輸入依存の供給停止する可能性がないとは言い切れません。しかしながら自給率向上を日本で実現するには、生産性の向上や、技術革新、省エネルギー、アップリサイクルなど、様々な取り組みが必要となっていくものと思われます。

関連記事

PAGE TOP