先日、身近な素材「コットン(綿)」の歴史や特徴、種類についてブログを書きました。
やさしい素材、綿最高。
さて、今日は一般的にはあまり知られていない、かもしれない、「綿が原料から糸になるまで」のお話をしたいと思います。お付き合いいただけたら幸いです。
収穫
はじめに。「コットン(cotton)」=「綿」となる繊維は、アオイ科の綿(ワタ)の木から収穫されます。
ワタの生育には、温暖な環境と600mm〜1200mmの降水量が良いとされ、中国やインド、アメリカ、パキスタンなどが主要産地となっています。
一口にコットン(綿)と言っても、多様な種類があり、例えば、UNIQLO(ユニクロ)がTシャツなどに使用し広く知られるようになったアメリカ産の超長繊維種のスーピマコットンなど。繊維の長さや産地によってそれぞれ特徴があります。詳しくは、ブログ>いつもそばにへ
綿花からふわふわの白い種子毛だけが摘み取られ、原料を加工して糸をつくる「紡績工場」へ運ばれます。
紡績工程
混打綿
紡績工場での最初の工程は混打綿といいます。コットンを解きほぐし、品質を良くする為に種カスやゴミなどの異物を取り除く作業です。
カード工程
その後、打綿機から送られてきたコットンを更にほぐし、短い繊維やもつれ、異物を取り除きます。綿菓子のような薄い膜になって機械から出てきたコットンを束ねて、カードスライバーと呼ばれるロープ状にします。
コーマ工程
カードスライバーをシート状にし、引き伸ばして巻き上げ、コーマラップというバームクーヘンのような状態にします。コーマラップを解いて櫛で梳くことで、更に短い繊維や細かな異物を取り除きコーマスライバーにします。長い繊維が揃うことで、カード糸に対して10%ほど強度が増し、光沢感出ます。
※コーマ工程を行わずに糸になるものをカード糸と呼びます。
練条工程
カードスライバー、コーマスライバーの状態では、まだ繊維の方向や太さにばらつきがあります。それらを均一なスライバーにするため、6~8本のスライバーを1本にまとめて6倍~8倍に引き延ばし、目的の糸を作るのに適した太さ(重さ)のスライバーに作り直します。2,3回この工程を繰り返すと、太さ(重さ)や繊維の方向が揃い均整の取れた練条スライバーが出来ます。
粗紡工程
粗紡では、練条スライバーを更に8倍程度に引き延ばして細くします。この工程でスライバーは一気に細く切れやすくなるため、撚りを入れながら(ねじりながら)引き延ばすことで糸に強度を持たせます。撚りを入れすぎると次の工程でうまく引き伸ばすことができなくなるので、この工程では1インチに1回前後の軽い撚りを入れます。ここで出来たものを粗い糸という意味の粗糸と言います。粗糸の太さは、作る糸の太さに合わせて太さを調整します。
精紡工程
粗糸を30倍程度に引き延ばして更に撚りを加え、糸にしてボビンに巻きつけて管糸という状態にします。精紡工程では糸の太さや撚りの強さだけではなく、形状や風合いも変化させることができます。数百本の粗糸を機械に掛け、糸をつなぎ、作り上げる糸の種類に合わせて(太さや撚数、ムラやスラブの形状)設定を合わせるなど、スタートまでに多くの人手と時間が掛かる工程です。この設定をロットと言い、同じ糸として販売しているものでも、ロットによって色や風合いにわずかな差が出たりするのです。
仕上げ
仕上げには2工程あります。
1つ目は精紡で出来た糸をより長く継ぎ合わせ、加工方法に合わせて使い易い長さにすること。管糸を継ぎ合わせて紙管(紙製の筒)に巻き上げ、一本の長い糸にします。円錐状の紙管を用いたものをコーンチーズ(通称:コーン)といい、角度をつけることで糸を引き出すときの抵抗を小さくしています。円筒の紙菅に巻いたものをパラレルチーズ(通称:チーズ)といいます。
2つ目は精紡までにできた欠点(異繊維の混入やスラブ、ネップ)を取り除き、よりきれいな糸にすること。最終的には糸の形状を目で、手で触れて、生地や編地の風合いを感じ取る職人の技も必要になってきます。
以上が、コットン(綿)が原料から糸になるまでの工程です。
糸をつむぐ
紡績とは、「糸をつむぐ(紡ぐ)こと」。
丁寧に、じっくりと、繰り返し繰り返し撚りあわせてゆく。
そんな様子を思い描くことができる、「糸をつむぐ」という美しい日本語が、私は好きです。
妥協せず作られた綿、想いをのせて紡がれる糸は、
今日もどこかで誰かをやさしく包んでいることでしょう。
では、今日はこれにて。
職人をリスペクトするマメクロゴウチの特徴 コード刺繍編