好きな服か、似合う服か(前編)

“好き”と“似合う”は別のもの?

自分は“これが好き”と思って着ている服も、人から見た時に似合っているかと言われると、そうとは限らない。
反対に人から”似合っているよ”と言われた服でも、なんだか自信をもって着られない時がある。

謎の『違和感』。
これってなんだろう?

外見は、「中身」を伝える名刺がわり

 
先日、僕の高校時代の友人がダイニングバーをオープンした。
10年ほど修行を積んで、ようやく独立という夢を叶えた。

このご時世なので、大変なことも多いだろうけれど、
愛される人柄、昔からアイディアマンだった彼なら、きっと成功するだろう。

プレオープンにご招待いただいたその日、真新しい店舗を訪れた。

にぎわう駅前から少し路地に入った、いわゆる隠れ家的とでもいうのだろうか。
間接照明が柔らかく照らす店内、奥にはBARカウンター。
テーブルが6つほどの大きさでゆったりと時間の流れを楽しめそうな落ち着いた作りだ。
この日はテーブルの数を減らして、立ち飲みスタイルになっていた。

招待時間に遅れたわけではなかったが、僕が到着した時には、すでに数名がグラスを片手に寛いでいた。
まずは店主である友人に「おめでとう」を伝える。
「つまらないものですが」と、お決まりの一言を添えてお祝いの品を手渡した。
久しぶりに顔を合わせたが、元気そうだった。
「ランチもやるから、よかったら来てよ」と昔と変わらない笑顔がそこにあった。

少し話をした後、招待客も続々と集まってきたので忙しいそうな店主を一旦開放。
改めてあたりを見渡すと、カウンターの奥にいた二人の男性が目に留まった。

頭の中で高校時代の友人たちから検索してみたが、ヒットしなかったので、
店主の僕とは違う方面での友人だろう。
なんか…イケてるな。

この日集まったのは僕や店主と同じ30代と思しき男性が主。
開店祝いということもあり、スーツで来店している人がほとんどだ。

ここ最近、冒頭の『違和感』について考えていた僕は、
この二人に何かヒントがある気がして、こっそりと観察を始めたのだった。

“似合う”と”好き”は、バランスが重要

二人の男性の服装には、一見スーツ以外に共通点がない。
だが、二人ともイケてるのは確かだ。

一人は、濃紺のスーツにサックスブルーのネクタイ、シンプルなプレーントゥの革靴を履いている。
もう一人は、ベージュのスーツにデニム素材のB.Dシャツ。足元はコインローファー。

不快感を与えないということはもちろんだが、
二人とも全く見せ方が違うにもかかわらず、すごく似合っている。
堂々としている、​余裕があるような”自信”を感じられた。

「この二人と話してみれば、ここ最近感じている違和感を紐解けるかも。」
確信にも似たこの感情を抑えられず、気持ちの高揚に任せ、忙しくしている店主の元へ。
少し申し訳なさを感じながら、二人を紹介してもらった。

営業職で30代前半の二人。店主とは前に働いていた飲食店で出会い、5年来の付き合いらしい。
話をしてみると、好きなブランドや美容室が一緒など、共通点が多くすぐに打ち解けられた。
どちらも昨年結婚しており、順風満帆な生活を想起させる。
羨ましさや妬ましさ。色んな気持ちに苛まれながら、気になっていた言葉をぶつけてみた。

「なんでも着こなせそうですけど、好きな服、似合う服が違って悩むことってありますか?」

僕の真面目な表情とは裏腹に、肩の力が抜けた表情の二人。
二人から返ってきた回答は、想像外の答えだった。

このイケてる二人は、ある基準に従って服を選んでいるというのだ。

それは…
服装のベースは「家族、同僚からの評判がいいもの」を着ること。
コーディネートに自分のお気に入りを必ず身に着けているということ。

好きなものはポイントで取り入れつつ、似合うもので全体を構成しているということ。
他人からの評価の似合うものと自分自身が好きなものを、共存させているというのだ。

回答に一瞬面を食らったが、冷静に考えると自然の摂理かもしれない。

社会に出て仕事をする、家族が出来る。年齢を重ねていくと、
服選びはいつしか自分の趣向から、他人からの評価が優先にシフトしていく。
でも、着る服にはやはり”好き”がないと気持ちよく着ることは難しい…。

そんな葛藤を、自分の”好き”を何か一つ身に着けることで解消する。
着せられている感や違和感がなく、「他人から好感を得られる、自分自身で選んだコーディネート」
と認識することが出来る。

私には思いつきもしなかった”共存”という発想。
二人の服装への解釈には、驚かされた。
仕事でもこのような柔軟な考えで取り組んでいるのだろう。

「人生人との出会いが全て。」とはまさにこのこと。
私のしがない質問に快く付き合ってくれた二人組、この場へ招待してくれた店主への感謝が込み上げた。

“似合う”を軸にしながら、好きを取り入れる

僕も着る服において、似合う服と好きな服に違いがあることで、閉塞感や違和感を感じた時期があった。
「好き=似合う」で着られるのが一番だが、実際はそう上手くいかない。

「似合うもの=自分の魅力・個性」と受け入れ、ポジティブに考えられれる人もいれば、
「似合うものが好きじゃない=自分​の魅力・個性は好きじゃない」とコンプレックスを持つ人もいる。

どう捉えるかは個々人次第。
ただ、そんな両者にも”好き”は必ず存在するはず。

自分の”似合う”をベースに、自分の”好き”を取り入れる

ただ似合うと言われたから着るのではなく、好きと心から思えるものを身に着けて自分を意思表示する。
この考え方で折り合いを付ければ、似合うと好きの間に生まれる”謎の違和感”が最小限になるだろう。

ぜひ服選びに悩んだ時は、この記事のことを思い出して欲しい。

後編では、
「似合うを論理的に知るためには?」
「好きを取り入れるときに注意することは?」

私も参考にしている趣向や具体的な方法をご紹介したいと思います。
次回もお楽しみに。

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