いつもそばにある「やさしい素材」

わたしたちの生活に、最も身近な繊維と言っても過言ではない「コットン」。

タオルや寝具などの生活用品からファッションアイテム全般にわたり、
本当に幅広く使われていてるため、肌に触れない日は、ないんじゃないでしょうか。

コットンは慣れ親しんだ「やさしい素材」として魅力的ですが、実はとっても奥が深いんです。
今回は、その歴史や素材の特徴、コットンの種類について紹介していきます。

コットンの歴史

「コットン(cotton)」=「綿」は、アオイ科の綿(ワタ)の木の、種を守るために生える白いふわふわした部分(種子毛/しゅしもう)から作られます。(コットンが糸になるまでのお話はまた後日に。)

さて、綿栽培の歴史は非常に古く、メキシコでは8000年前の種が発見されているそうです。
これが、現在も世界中で広く栽培されているコットンと同種だといいます。
さらに、メキシコやアメリカ大陸諸地域、インドやバングラデシュでも栽培した木綿を糸や布として、紀元前のうちに輸出までしていたというのだから驚きです。
まさに時を超え愛され続けるとはこのこと…ロマンを感じますねぇ。

ちなみに、日本へ綿花(※1)が伝わったのは意外と遅く、10世紀ごろ。中国に伝わったのと同時期だと言います。ところが亜熱帯の植物である綿の栽培がうまくいかず、一度種を絶やしたしまったのだとか。…あらまぁ。

そのため、日本では16世紀ごろ、いわゆる戦国時代あたりまでは、「綿」は中国から輸入される“高級品”だったわけです。
時代が進み、江戸時代までくると、日本での綿栽培や綿布の生産も定着し、高級品だった「綿」は庶民的な、誰しもに親しみのあるものへと立ち位置を変えていきます。
日本で木綿の着物が主流になる前に普及していたのは、麻・葛くず・藤・楮こうぞなどの植物繊維や絹。麻や絹は今も素材として広く使われていますが、そのほかは…う~ん。
服として着るとなると、硬そうだし着心地悪そうなイメージですね。綿最高。

温故知新というとおり、歴史に触れるといろんな発見があるものです。

※1 綿花とは>「ワタの木の花」と思うかもしれませんが、実はワタの果実のこと。熟した実がはじけて白い種子毛が現れます。この状態が花のように見えるため、「綿花(めんか)」と呼ばれるようになったそう。

メリット – コットンの良いところ

①冬暖かく、夏涼しい、しかも丈夫
コットン繊維の中心部は空洞になっています。マカロニをイメージしてもらうとわかりやすいでしょうか。構造上、熱が伝わりにくく、たまった熱が放出されにくいのが特徴です。
また、この空洞は「空気を含むことができる」ということでもあります。衣類の保温性は布地が含んでいる空気量によって決まるので、空気を多く含むことができる綿は、冬に体温を外に逃すことなく、暖かさを保ってくれます。天日干ししたお布団の、ほかほかの暖かさが続くことを想像してください。

もう一つ、繊維の空洞は水分を含みやすい特徴もあり、吸水性に優れていると言えます。
コットン(衣服)の内側(体)と外側(外気)に温度差が生まれると内側の水分を吸収して外側へ発散する性質を持っています。さらに気化熱を伴い、通気性がよくなります。
簡単に言うと、汗を吸い取って熱と共にそとへ放出してくれるってことです。そのため、コットン素材の服を着ていると、夏には涼しく感じます。

丈夫、という点でもコットンは優れていると言えるでしょう。シルクなど、他の天然繊維に比べてコットンは水に強いことも特徴です。
家庭で手軽にお洗濯することができるため、日常使いのお洋服や生活用品に最適です。また耐熱性にも優れているため、アイロンがけも気軽にできます。

②柔らかで肌触りが良い
コットンが柔らかく感じられるのは、繊維の先が丸みを帯びているからでしょう。繊維の引っかかりやチクチクする肌への刺激がほとんどなく、ポリエステルやナイロンなどの衣服に比べ帯電しにくく静電気が発生しにくい性質です。「綿=やさしい素材」のイメージは刺激の少ないところからも強く感じるようですね。
敏感肌の方でも肌に直接触れる下着に、ふんわりと優しい肌触り、通気性と吸水性を兼ね備えたコットンを選ぶことで、快適に過ごすことができます。

③染色しやすく、発色が良い
衣服などの製品にする際には、糸を「染める」ことがほとんどです。
コットンは染色に必要な温度環境が50~70度程度なので、非常に高温の環境が必要な化学繊維より多くの染め方を選ぶことができます。
糸の状態で染める「先染め」、布の状態で染める「後染め」のほか化学繊維では特に難しい、製品化したのちに行う「製品染め」もコットンは可能です。染色性に加え、発色性も優れており美しい色合いに仕上がるため、思い通りの色に染めることができるのがコットンの良いところですね。

デメリット – コットンの困ったところ

①縮みやすい
良いところがあれば、逆もあります。
吸水性に優れているというメリットの反面、洗うと縮みやすくシワになりやすい性質があります。水分を吸収した繊維が膨張し、乾燥する過程で編み目が詰まり、縮みが起こります。
製品を一番はじめにお洗濯した時が最も縮みやすいタイミングです。干す時にシワを伸ばすことで、縮みを最小限に抑えることができます。また、熱が加わると縮みやすくなるので「お湯洗い」や「乾燥機」は避けた方がよいでしょう。

②乾きにくい
季節によってはとっても困ること、「乾きにくい」という特徴もあります。
コットンは吸水性に優れているがために、化学繊維に比べ速乾性がありません。湿気が多いままの状態が長く続くと、嫌なニオイが発生しやすくなります。服と服の間隔を20cmほどあける、厚みのあるハンガーを使って服の生地に隙間を作るなど、風通しが良い場所、状態にして干すと良いですね。

③色落ち、変色することがある
染色性が良い反面、気を付けないとお洗濯の際に色落ちや色移りをすることがあります。
濃い色の製品は洗濯中に染料が溶け出してしまう可能性が高く、はじめにお洗濯する時だけでも白いものとは仕分けをして洗うことを心がけましょう。
色移りを防ぐには、洗濯物が濡れた状態のまま触れ合わないようにすることが重要です。すぐに干すことと洗濯ネットの使用も効果的。また、直射日光や紫外線に当て続けてしまうと変色・退色の原因となりますのでこちらも注意が必要です。

コットンの種類

コットンは原料の繊維の長さによって、短繊維種、中繊維種、長繊維種の3つに分類され、一般的に、繊維が長いほど上質として扱われています。
服地に多く使われるのは中繊維種、長繊維種で繊維長が20mm~30mm弱程。また、3つの大分類の中で、より高級種である長繊維種のうち、繊維長が35mmを越すものを「超長綿」と呼びます。

次に「超長綿」において、綿市場全体のわずか数%程度しか栽培されない「世界3大コットン」を含め、特に稀少性の高い品種を4つご紹介します。

スーピマコットン

ピマコットンという、アメリカで栽培される最高品質のコットンのうち、スーピマ協会の基準をクリアしたメイド・イン・USAの高品質な超長綿で、世界三大綿のひとつ。
繊維長が長く硬さを感じることの無い手触り、それでいて強度は通常のコットン4割増し。
さらに色を吸収しやすく染色が美しい。「綿のカシミヤ」と呼ばれ光沢感やしなやかさが特徴です。
美しさ、着心地の良さ、耐久性とバランスの取れたコットン。

ギザコットン

エジプトで栽培されるコットンの中でもナイル川流域の一部でしか収穫されない、別名「白いゴールド」。最高品質の超長綿で、世界三大綿のひとつ。
繊維1本1本が非常に長いことで知られ最高品質のギザコットンは「GIZA45」と呼ばれている。
ギザコットンの生地は植物性の油脂が適度に含まれているので、光沢のあるとろみ感があり、軽くしなやかな風合いと高い発色性も特徴。
高級コットンの代名詞的存在。

新疆綿(しんきょうめん)

中国の新疆ウイグル自治区で栽培されている超長綿で、こちらも世界三大綿のひとつ。
世界でもトップクラスの綿花栽培国である中国。その中でも新疆綿は希少価値の高い高級綿で、アパレル業界では知らない人はいないのではないでしょうか。
ピマコットン、ギザコットンと同様に繊維は長く、「幻のコットン」と呼ばれることも。しなやかでやわらか、滑らかな肌ざわり、シルクのような美しい艶が特徴。
収穫は全て手摘みで行っており、安定した高品質にも定評があります。

シーアイランドコットン

※現在はジャマイカおよびバルバドスの2か国で栽培
年間の生産量は綿全体の10万分の1というとても希少なコットン。
平均繊維長が世界で一番と言われており、カシミヤのようなふっくら柔らかな肌触り、抜群の吸湿性を持ち合わせています。
また他の綿に比べ1.5倍もの光の反射度があり絹のような美しい光沢を持っています。

オーガニックコットン

みなさん、聞いたことがあると思います。「オーガニックコットン」。
名前からは、さらに「肌触りがよい」などの特徴がある種類なのかと思いがちですが、実はそうではありません。違うのは、品種ではなく、生産方法です。

オーガニックコットンとは、それぞれの国が定めた認証機関によって制定される、「オーガニック農産物等の生産方法についての基準」に従って、オーガニック農産物等の生産実績(3年以上)を経て認証機関に認められた農地において、栽培に使われる農薬・肥料の厳格な基準を守って育てられた綿花を指しています。

オーガニックコットンとして認める主な基準には、下記のようなものがあります。
・栽培前の3年間に関して、無農薬・無化学肥料の畑で栽培されていること
・化学肥料は使っていないこと
・農薬(殺虫剤など)を使っていないこと
・染色などの加工段階でも化学処理されていないこと

つまり、収穫されるコットンそのものは、「コットン」も「オーガニックコットン」も変わりはありません。
しかし「オーガニックコットン」は、より「やさしいコットン」であると言えるでしょう。

農薬や化学肥料を使わないということは、農薬の生産過程で排出されるCO₂を削減する、農薬・化学肥料の使用による土壌や水質汚染、生物への影響を抑えることができるということです。そのため「オーガニックコットン」を選ぶということは、有機栽培農地が拡大し、その結果CO₂削減、土壌・水質の改善へとつながり、環境と人の健康が守られることになるのです。そういった意味での「やさしいコットン」。

いつもそばにある身近な素材だからこそ、意外と知らないこともあるものですね。
あらためて、綿最高!

では今日はこれにて。

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