Mame KurogouchiのアイコンといえるPVCのバッグ。
ブランド初期、この技法やデザインは発明的でした。
ポリ塩化ビニールにこんな風にカッティングを施して、美しい芸術作品のようなバッグを作り出すなんて。
私は当時の衝撃を忘れることはできません。
最近のコレクションでは、2020FWコレクションのテーマ「包む」で作り上げたコード刺繍のウエア。
完成度の高い繊細なコードレースを大胆に使ったジャケットやバッグ。
このシーズンのルックを見たときは震えましたね。なんて格好いいんだ、て。
Mame Kurogouchiの“現代社会における戦闘服”というコンセプトを改めて強く印象付けられました。
公式サイト(Mame Kurogouchi)より引用
デザイナーの黒河さんは素材の研究に熱心で、頻繁に素材産地をめぐり、職人さんたちからの信頼も厚いそうです。
勉強のためにとアトリエで飼い始めた蚕からインスピレーションを受けたといいます。
蚕の幼虫がサナギになり、繭で自身を包んでいく様子。そこに神秘的な美しさを見出したのです。
「包む」発想は広がりをみせ、ごみ置き場のカラス除けネットから光るメッシュの服が、
透けて見えるゴミ袋から繊細なレイヤードウェアが生まれていきます。
毎シーズン続くブランドクリエイションにおいて、
彼女の視点、「日常の中の美しいもの探し」スキルの秀逸さには、いつまでも感動が尽きません。
次の、2021SSコレクション「窓」をテーマに決めたのは、コロナ流行の前だったそう。
それから自宅にいなければならない時間が増えたが、「そこにも窓があったから」、
ゆっくりと過ごす中、風に揺れるカーテンが彼女の妄想を広げていったといいます。
公式サイト(Mame Kurogouchi)より引用
「窓にカーテンを選ぶように」使う生地を選び、人の記憶の色をカーテンに重ねる。
記憶を呼び起こす感情のレイヤー、白いヴェールを潜っていくような感覚。
これを服で表現するために、何度も何度も試作し、決して妥協しない。
作成にあたる工場からは、もう勘弁してといわれるほどだったとか。
彼女にとってそのこだわりは、あたりまえのように、ごく自然なことなのですね。
走り始めてからずっと、ファンの期待をこえるクリエイションを続けるMame Kurogouchi。
今はオンラインショッピングが主流といっても過言ではない時代です。
だけど、写真や映像では伝わりきらない感動もある。
デザイナー自身がそう願うように、
叶うことなら、Mame Kurogouchiの服は実際に見て、触って、オーダーしてもらいたいものです。
「目は冷たいのに身体は暖かい」長野の冬の香り