LVMH(モエヘネシールイヴィトン) がブロックチェーン技術を導入したのはなぜ?背景から具体的な内容をご紹介!

今回はなぜモエヘネシールイヴィトンがこのような技術を導入したのか?また、そのきっかけや背景、ブロックチェーン技術を用いることで何が変わるのか?ゆっくりご紹介していきます。

LVMHのブロックチェーン共同プロジェクト AURA

ブロックチェーンテクノロジーを世界でリードしているConsenSys(コンセンシス 本社:ニューヨーク)は2019年5月16日、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン 本社:フランス)、そして、Microsoft (マイクロソフト 本社:ワシントン)と共同で高級ブランド業界を発展・成長させるための共同プロジェクト、AURAについてのプレスリリースを発表しました。
このAURAとは、ルイ・ヴィトンが3年以上かけて検証に検証を重ねたトレーサビリティプログラムの結果を受けて開発されたプロダクトとなっています。
このプロダクトは、ハイブランドなどの高級産業を今以上に活性化するために、Ethereumブロックチェーンテクノロジーに基づいてMicrosoft Azureを使用して開発されました。
この取り組みは、製品のライフサイクルをとおして、一般消費者に高いレベルの透明性と流通状況の見える化を実現してくれています。
では、なぜこのような技術が必要とされているのでしょうか?

注釈

・トレーサビリティプログラム…その製品の原材料〜廃棄されるまでの流れが調べられるようになっていて、追跡調査ができるかどうかということ
・ブロックチェーンテクノロジー…ビジネスネットワーク内で透明な情報共有を行えるようにする高度なデータベースメカニズムのこと
・Microsoft Azure…マイクロソフトが管理しているデータセンターを通して提供されているクラウドコンピューティングサービスのこと

高級ブランド業界の偽造品被害の実態

これまで高級ブランド業界は、「新品」と「中古品」両方の流通市場において、長い間、偽造品の被害に悩まされ続けています。
やや古い資料になりますが、OECD (経済協力開発機構)の発表によると、偽造品、著作権侵害物の取引は2016年では5090億米ドル(1ドル130円として なんと66兆円)と推定され、世界全体の貿易額の3.3%を占めるまでになり年々増え続けています。  参考資料:Trends in Trade in Counterfeit and Pirated Goods

上記の数字は税関での押収物のデータより算出されたもので、その押収物は靴、衣料品、革製品、電気製品、時計、医療機器、香水、玩具、宝飾品、薬品となっています。特にルイヴィトン、グッチ、タグ・ホイヤーなどの高級ブランド品は、そのブランドの全取引額の4分の1程度がこのような不正な取引ともいわれており、また不正取引全体の6割〜7割程度を占めているという報告もあるくらいです。

その中で最も多く偽造されているブランドのルイヴィトンを所有するLVMHは偽造品対策費用として、年間15億円以上も投入しているといった情報もあり、高級ブランドにとって深刻な悩みとなっていることがうかがえます。

ブロックチェーンが解決してくれるルイ・ヴィトンの課題は?

このブロックチェーン技術が何を解決するかというと、原材料、その原材料から作られた商品の流れに限らず、一度販売された後にどのようにして中古市場へと到達しているのかを追跡可能にしてくれます。それによって悪質な偽造品を排除することができ、ブランドの信頼性を保護することが可能となります。ルイヴィトンがこれまで悩まされ続けてきた「偽造品対策」の解決にアプローチを始めた形になっています。

具体的にお話しすると、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を扱うための規格のことです。代替可能というのは、例えば複数枚の1円玉があったとします。それぞれの一円玉は別物であるのですが、基本的には同じ価値しか持たず、お互いの価値を代替できるものをいいます。
一方で、資産、アートといった他のものと代替することができない唯一性を持つもののことをNFTと表現します。版画作品などは同じ版から何枚か刷られているのですが、その出来映えや刷られたタイミングなどによって、それぞれ値段が異なるケースがあります。今回のブロックチェーン技術は、「版画作品A」として価値を判断できるようにするのではなく、「版画作品Aの全25版の中で1番目に刷られている作品」としての価値を担保することが可能となります。
細かくご説明すると、
・商品の真正規格かどうか
・(倫理面、環境に負荷がかかっているかどうかの情報も含めた) 商品の原材料
・取り扱い説明書
・アフターサービス、保証の有無
といった情報を把握することが可能となっています。。
製品の歴史とブランドの信頼性を証明可能にして、偽造品などの不正商品を排除し、ブランドの価値を損ねるリスクから守ることを実現しています。

LVMHの発表内容

実際にモエヘネシールイヴィトンが発表している内容は以下の通りです。
(引用先:https://www.lvmh.co.jp/)

LVMHは、プラダとリシュモン傘下のカルティエという2大ラグジュアリーブランドと共同で、初のグローバルラグジュアリーブロックチェーンであるAuraブロックチェーンコンソーシアムを設立しました。2021年4月20日に発表されたこの前例のない競合他社とのコラボレーションは、信頼性、責任ある調達、持続可能性に関する情報を安全なデジタル形式で送信するという共通の課題のための、独自の革新的なソリューションです。その目的は、製品のライフサイクルを通して、消費者に高いレベルの透明性とトレーサビリティを提供することです。

Auraブロックチェーンの最先端の技術は、製品IDと顧客IDを照合し、安全で再生不可能なデジタルブロックを通して、消費者が原材料から販売までのバリューチェーンの全ての段階の、製品の過程とその信頼性の証明にアクセスできるインフラを提供します。これにより、消費者は、第三者の検証を必要とせずに、信頼性のあるデータで製品のライフサイクル全体を追跡することができます。Auraは、ラグジュアリーブランドが消費者と直接コミュニケーションを取るための新しい方法を提示し、素材の品質、職人技術、創造性にまつわる独自のストーリーを伝え、顧客とブランドの関係を強化します。

トレーサビリティー、持続可能性、信頼性の問題は、全てのラグジュアリーブランドに共通するものであるため、競合他社が協力して変化を促し、共通の解決法を見つけ出すことは意味を成します。LVMHは、プラダとリシュモンと共同で、ConsenSys社の技術とマイクロソフト社によって保護されたマルチノーダルのプライベートブロックチェーンであるAuraブロックチェーンコンソーシアムを設計しました。Auraは、創設企業だけではなく、全てのラグジュアリーブランドに門戸を開き、様々な規模の企業を支援し、個々のニーズに対応できる柔軟性があります。

LVMHメゾンでは、ウブロ、ブルガリ、ルイ・ヴィトンが既にこのプラットフォームに参加しています。例えば、ウブロは、デジタル電子保証書を開始し、電子保証書はAuraのインフラに保存され、顧客は携帯電話で撮影した簡単な写真で、時計の信頼性を確認することができます。Auraを使用するブランドは、独自性と顧客の期待に応じて、それぞれの体験を開発します。また、独自のデータを保管し、顧客のプライバシーを厳守し、情報は変更、改ざん、ハッキングができない形でブロックチェーン上に保存されます。

LVMHのマネージングディレクターであるトニー・ベローニが述べます。「Auraブロックチェーンコンソーシアムは、私たちの業界にとって、製品をより知ってもらうためのシンプルな解決法を提供することで、顧客とのつながりを強化することができる絶好の機会です。他のラグジュアリーブランドと協力し、このプロジェクトに取り組むことで、私たちは透明性とトレーサビリティへの道をリードして行きます。他の名だたるプレーヤー達が、私たちの提携に参加することを期待しています。」

まとめ

今回はLVMH(モエヘネシールイヴィトン)がブロックチェーン技術を導入した背景から具体的な内容まで細かく解説してみました。
世の中では価値のあるものは不正のターゲットになり、偽造品が横行しており、それらを排除できるいい技術でした。世界的にハイブランドはこれらの技術を導入する流れがあります。ブロックチェーンは、唯一の商品価値を守り、その価値をより高めていくというソリューションが可能になっています。
今後、この技術が普及したら偽造品を知らぬ間に購入してしまった、などのトラブルがなくなっていくと想定されます。今後の動向に期待したいと思います。

LVMHグループとKeringグループ リアルファー・エキゾチックレザーの取扱い対比

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